日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-17
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ポスターセッション
抗-酸化LDL抗体を用いた免沈回収産物の迅速プロファイリングによる心血管疾患マーカー探索
*宮崎 賢司田伏 洋寺本 礼仁宗政 歓子松村 貴由相澤 健一永井 良三鈴木 亨
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抄録

NECでは、等電点電気泳動と質量分析を組み合わせた蛋白質・ペプチドの分離検出デバイス(チップ)の開発を行ってきた。前回までの大会ではこのチップを用いてさまざまなモデル蛋白質やペプチドの実験で得られた基礎的なデータの報告を行ってきた。また応用例として心疾患患者の血清に対して免疫沈降を行い、トリプシン消化の後得られるペプチド断片群の等電点・質量プロファイリングが可能であることを示した。 今大会では検体数を増やしてチップによるプロファイリングとデータ解析の結果得られた心血管疾患関連ペプチドピークについて報告する。  動脈硬化性疾患はわが国の死因の第2位(心疾患15.9%、脳血管疾患11.8%)を占めており、その予防対策は医学的かつ社会的に重要な課題となっている。動脈硬化の病態の進展、悪化においては蛋白質・ペプチドの酸化修飾などによる変性が中心的な役割を果たすため、これらの酸化修飾を測定、診断する技術開発により動脈硬化の進展予防、早期発見、さらに治療効果の判定が可能となると思われる。事実、酸化LDL等の研究から酸化ストレスが心血管疾患の病態において中心的な役割を果たすことが示されてきている。そこで、抗-酸化LDL抗体を用いて血清に対して免疫沈降を行い、心血管疾患に関連する蛋白質の修飾部位の特定を行うことを目指して、チップを用いた実験を試みた。 冠動脈病変枝数が0から3のいずれかの段階に分類される80人の患者の血清を対象に免疫沈降を行った。回収産物は抗体からはずさずに、直接トリプシン処理によりペプチド断片化を行った。断片化ペプチドに対して等電点電気泳動をチップ上で行った。泳動後凍結乾燥して等電点分離状態を保持した状態でペプチドを流路内に乾燥状態で保持し、引き続きマトリックスを塗布した。流路長に対して区画割を行い、各区画ごとに質量分析して、等電点と質量スペクトルの情報を併せ持つ2次元データを取得した。こうして得られた等電点・質量プロファイルを患者ごとに作成し、疾患関連ペプチドの探索を行ったところ疾患群を統計的に有意に分類するいくつかのピークの特定に成功した。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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