日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-19
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ポスターセッション
潰瘍性大腸炎の粘膜病巣における上皮・間質微細環境変化に関与する特異的タンパクの探索 -生検材料のプロテオーム解析によるタンパク同定-
*荒木 香代三上 哲夫吉田 功佐藤 雄一岡安 勲
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抄録

【目的】潰瘍性大腸炎(UC)は粘膜の炎症と再生を繰り返す炎症性腸疾患であり、長期経過例で大腸の発癌頻度が極めて高い。当単位におけるこれまでの検索で、UCからの発癌においては粘膜リモデリングに加えて、間質細胞のゲノム不安定性が早期に生じることが重要であることを示してきた。このことは、炎症巣における間質微細環境の変化と上皮細胞との相互作用が発癌において重要な役割を果たしている可能性を示しており、上皮間質を含めたUC炎症巣での微細環境を特徴づけるタンパクの同定が望まれる。本研究では、UC炎症巣での微細環境を特徴づけるタンパクを明らかにするために、生検材料を用いたプロテオーム解析を行った。
【方法】北里大学東病院で生検を行った潰瘍性大腸炎(UC)症例(活動性と非活動性)の粘膜を用いた。組織からタンパクを抽出した後、アガロース二次元電気泳動によるタンパク分離と二次元電気泳動解析ソフトウェアを使用したスポットの比較・定量化を行った。活動性UC粘膜と非活動性UC粘膜で発現に有意な差が認められたスポットからタンパクを回収し、質量分析装置(MALDI-TOF-MS)を用いてタンパクの同定を行った。
【結果】活動性UC粘膜と非活動性UC粘膜の比較では有意な発現差の認められたスポットが18個検出された。そのうち活動性UC粘膜で発現の増加しているスポット12個、発現の低下しているスポット6個についてタンパク同定を行った。その結果、活動性UC症例で有意に発現が減少しているタンパクとしてGalectin 4 が検出された。
【考察】Galectin 4 は消化管に特異的に発現している糖鎖結合タンパクで、上皮細胞の増殖や遊走に関与することが示されており、上皮細胞の修復に関与することが報告されている。今後、症例数を増やして解析するとともに、Galectin 4を含む検出された有意なタンパクについて組織上で免疫組織化学染色による解析を行い、慢性炎症に関る特異的タンパク発現の局在や発現量を確認していく予定である。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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