日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-2
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ポスターセッション
全自動2次元電気泳動装置を用いた臨床サンプルの2D-Western解析
*緑川 宇一坪田 誠之森川 崇木下 英樹丸尾 祐二鵜沼 豊中村 眞荒木 令江
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抄録

我々は、2D-DIGE法とiTRAQ法により脳腫瘍(グリオーマ)の悪性化に関連する蛋白質群の解析を行っている。現在までに、抗癌剤耐性グリオーマ特異的な発現亢進蛋白質を合計69個同定した。特に顕著にリン酸化及び特異的切断などの修飾活性が亢進している分子として同定したVimentinに注目し、その発現パターンを詳細に検証するため、我々が開発している全自動2次元電気泳動装置を用いて、高感度・高分離能・高速な2D Western Blotting法 (Auto-2D western法)による微量解析を検討した。2D-DIGEによってVimentinには少なくともリン酸化や切断等の修飾を受けた16個のスポットが存在することが確認されたが、本法にてこれらの発現パターンを解析したところ、Vimentinは分子量が53kDa(グループ1)、48kDa(グループ2)、45kDa(グループ3)、42kDa(グループ4)の4群に分かれており、それぞれ少なくとも3-5個ずつ(計14個以上)のPIの異なるスポットが検出された。Vimentin C末端認識抗体では全てのスポットが検出可能であったが、N末端認識抗体ではグループ4及びグループ1の酸性側は検出されず、Vimentin のN末端での切断やリン酸化等による翻訳後修飾の変化の迅速解析が可能であることが判明した。また、グリオーマ細胞U373において、Staurosporin刺激によるCaspaseの活性化やCa2+イオノフォアによるCalpainの活性化によって、Vimentinが特異的に断片化され特徴的なスポットパターンを発現すること、これらの阻害剤にて断片化が抑制されること、さらに、これらの切断パターンが抗癌剤耐性グリオーマのVimentin特異的パターンと類似していること等がAuto-2D Western法にて詳細に明らかになった。さらに、抗体カクテルを用いたAuto-2D Western法にて、脳腫瘍サンプル内の特異的蛋白質スポットの定量システムを構築し、抗癌剤感受性に関連して変動する各スポットが定量的に測定可能であること、これらのプロファイルから病態の分類が可能であることを証明した。本Auto-2D Western法は、脳腫瘍のみならず、各種の臨床サンプルや病態モデル細胞の解析に応用可能であることが示唆された。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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