日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-31
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ポスターセッション
子宮内膜症の新たな血清診断マーカーとしての抗α-enolase自己抗体
*鍋田 基生阿部 康人草薙 康城植田 規史伊藤 昌春
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抄録

【目的】子宮内膜症とは子宮内膜様組織が本来の正常な位置である子宮腔内面以外の組織や臓器などに、異所性に存在し増生するために生じる病態である。生殖年齢女性の約10_%_に発症するといわれ、良性疾患でありながら生殖年齢の間、増殖・浸潤などにより進行性に発育する。約90_%_に月経困難症などの症状を認めるが、月経期以外にも下腹部痛をはじめとする疼痛を認めることが多く、女性のQOLを著しく損なう疾患である。子宮内膜症の診断は、腹腔鏡または開腹による視診と組織診での確定診断が推奨されているが、外科的侵襲を伴うため患者の負担となる。私達は簡便な子宮内膜症診断方法の確立を目指し、患者血清中に発現する自己抗体性血清診断マーカーを探索した。 【方法】ヒト悪性胸膜中皮腫由来細胞株を用いて2次元電気泳動及びWestern blottingを行い、子宮内膜症患者と健常者の血清中に存在する自己抗体を検索した。患者血清に特異的に反応したスポットをMALDI TOF-MSを用いPMF法にて解析し、抗原タンパク質を同定した。大腸菌発現系を用いてリコンビナント蛋白質を精製し、血中自己抗体検出のためのELISA法を確立した。 【成績】数種の自己抗体を同定した。ELISA法で解析すると、抗α-enolase自己抗体価が、健常者群(223.9±113.8 U/ml)および疾患対照群(236.5±119.7 U/ml)と比較して、子宮内膜症群(348.6±225.1 U/ml)で有意に高値(vs.健常者群p=0.00035、 vs.疾患対照群p=0.0022)であった。血清抗α-enolase自己抗体の感度(36.9_%_)と特異度(91.4_%_)は既存の診断マーカーである血清CA125とほぼ同等であった。血清抗α-enolase自己抗体とCA125を組み合わせることにより、子宮内膜症診断の感度を60.0%に上げることが可能であった。 【結論】血清抗α-enolase自己抗体は子宮内膜症の新たな血清診断マーカーとなる可能性があり、CA125と組み合わせることにより、更に有用性が高くなることが示された。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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