日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-34
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ポスターセッション
顕微鏡的多発血管炎患者血清ペプチドの網羅的探索
*高桑 由希子黒川 真奈絵大岡 正道永井 宏平有戸 光美増子 佳世末松 直也岡本 一起尾崎 承一加藤 智啓
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抄録

【目的】顕微鏡的多発血管炎(MPA)はいわゆる血管炎群に属する疾患であり、小血管(毛細血管、細小動・静脈)を主座とした壊死性血管炎を惹起する。急性腎不全や間質性肺炎・肺出血により予後不良となる。MPAの病因は未だ不明であり、本研究では質量分析を用いてMPAの病態解明と早期診断に有用な血清ペプチドを探索することを目的とした。 【方法】MPA患者26例について治療前と治療開始1週間後または6週間後に、対照として調べた全身エリテマトーデス(SLE)患者27例については治療前に、文書同意のもと末梢血を採取し血清を分離した。この血清より疎水性担体(C18)を用いてペプチドを分離し、MALDI-TOF型質量分析器を用いて、ペプチドを網羅的に検出した。また、ClinProt®を用いて、上記において差異のあるペプチドを抽出した。さらにそのペプチドの一部は2D-HPLCと質量分析の組み合わせにより、アミノ酸配列を同定した。 【結果】MPA患者血清中のペプチドを解析した結果、治療前でイオン強度が高値を示し治療により減弱する1523m/z、1737m/z、2503m/zおよび7767m/zのペプチド、また治療前ではイオン強度が低く治療により増強する1625m/z、2115m/z、7160m/zのペプチドを検出した。この中で1523 m/zと1737 m/z はSLEの治療前群では殆ど認められず、MPA患者の治療前群において特異的に検出された。de novoシークエンスより1523m/zはアポリポ蛋白質 A1のC末端の13アミノ酸残基であることが判明した(以下p1523)。また、MPA患者14症例の治療前と治療後6週間のアポリポ蛋白質A1の血中濃度をELISAで測定したところ、治療前(平均5.9 µg/dL)では低値であるが、治療後(平均12.9 µg/dL)には健常人(平均11.9~16.5 µg/dL)と同程度にまで回復することを認めた。p1523の病態的意義を検討するため、このペプチドを化学合成して培養血管内皮細胞に添加し各種炎症性サイトカインの分泌量をELISAにて調べた。その結果、p1523は血管内皮細胞からIL-6とIL-8を分泌させることが明らかとなった(P<0.01)。 【結論】アポリポ蛋白質A1のC末端13アミノ酸残基からなるペプチドは、MPAの活動期に血清中で増加している。血管内皮細胞からのIL-6とIL-8の分泌を増強させることから、好中球の遊走を含み血管炎病態を増悪させる可能性が示された。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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