日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-33
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ポスターセッション
糖尿病診療における、有用なバイオマーカー探索を目的とした血清プロテオーム解析
*高田 哲秀松原 まどか大石 正道小寺 義男前田 忠計守屋 達美
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抄録

糖尿病慢性合併症は初期には自覚症状の無い事が多く、早期に簡便にスクリーニングする臨床検査が無いため、長期間にわたって放置されている症例が多く見られる。慢性合併症の早期診断、早期の治療介入は、合併症の発症・進展の抑制に重要であり、臨床の現場では簡便で有用なバイオマーカーが必要とされている。我々は糖尿病慢性合併症早期診断のため、進展・増悪の指標となりえるバイオマーカー探索を目的として糖尿病患者血清を用いたプロテオーム解析を行った。【方法】対象は、健常者9例、1型糖尿病16例、2型糖尿病42例。HbA1c は1型8.9±1.8、2型9.6±2.3、空腹時血糖1型146.7±66.7、2型152.9 ± 54.9であり、病悩期間は1型3.8±5.9年、2型7.5±7.7年であった。血清中には、大量のアルブミンやグロブリンが含有されており、これらのタンパクにより他の微量タンパクの解析が困難となる。このため我々は、特異的アルブミン・グロブリン除去カラムを用いてこれらのタンパクを除去し、SDS-PAGEにてタンパクの解析を行った。また、血清には分子量10Kda以下の数多くのpeptideが存在する。peptideの解析は再現性が乏しく、またpeptideを解析する際の高分子タンパクの除去において、多数のpeptideが失われることが問題点であった。我々の行っているpeptide解析法(北里法)は高分子タンパクを除去することなくpeptideを再現性よく解析できることが特徴である。この方法を用いてpeptide解析を行った。【結果】SDS-PAGEにて健常者と糖尿病患者を比較したところ、糖尿病患者血清で1種類のタンパク成分の増加が認められた。HbA1cと、このタンパクの発現量を検討したところ、HbA1c7.5_%_以上の群、10.5%以上の群では、7.5%以下の群と比較して、発現量が有意に増加していた。peptide解析の結果、糖尿病患者で1種類のpeptideの増加を認めた。このpeptideの発現量をnormoalbuminuria(NA)群,microalbuminuria(MA)群に分けて解析を行った結果、NA群と比較してMA群では発現量が有意に増加していた。また、NA群においても健常者より発現量が有意に増加していた。このペプチドからは血小板関連タンパクが同定された。【総括】糖尿病患者の血清プロテオーム解析を行い、数種類のタンパク変動を認めた。これらのタンパク変動は、HbA1cおよび糖尿病性腎症の病態に伴う変動と考えられた。これらのタンパクが、糖尿病の有用なバイオマーカーとなる可能性が考えられた。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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