日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-41
会議情報

ポスターセッション
出芽酵母二倍体におけるBud32p複合体による極性制御機構
*加藤 悠川崎 博史平野 久
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

細胞極性とは細胞がもつ空間的な極性のことである。細胞極性の形成と制御は、細胞分裂、分化、細胞遊走などにおいてもその根幹となっている。出芽酵母においても、出芽部位選択によって細胞極性が形成される。
出芽酵母は一倍体と二倍体では出芽様式が異なり、各々異なる出芽マーカーによって出芽が制御されている。網羅的な解析により、二倍体の出芽部位選択に関する遺伝子が多数同定され、その中には他の機能を担っている遺伝子も二倍体の出芽部位選択に関与することが報告されている。本研究で用いたBUD32もこの網羅的解析によって同定されたものの1つである。二倍体BUD32破壊株では、正常な出芽部位選択が行われず、ランダムな部位から出芽が起こる。Bud32pはヒトPRPK(p53-related protein kinase)と相同であり、セリン/スレオニンプロテインキナーゼ活性を持つ。PRPKはp53に結合して、p53をリン酸化し、その活性制御に関与していると考えられている。近年、Bud32pを含む2つの複合体が単離され、それぞれ、転写制御とテロメアの伸長維持に関与していることが示唆された。しかし、Bud32pがどのように出芽部位選択に関与するか明らかでなかった。
本研究において、Bud32p複合体が二倍体の出芽マーカーであるBud9pの局在を制御していることがわかった。一倍体と二倍体におけるBUD32の破壊株の表現型から出芽部位選択の異常は二倍体のみで起こることが明らかになった。そこで、二倍体からBud32p複合体の構成成分を同定し、各成分の破壊株の表現型を解析すると共に、各破壊株での出芽マーカーの局在を解析した。Bud32複合体の構成タンパク質の破壊株での表現型や出芽マーカーBud8p、Bud9pの局在の観察から、この複合体が出芽マーカーであるBud9pの局在維持に関与していることが明らかになった。2つの出芽マーカーBud8p、Bud9pは、対極の位置関係を保っているが、Bud32複合体の破壊株でみられるランダムな出芽はBud9pが局在しないために、その軸がずれ、その結果、出芽部位が両極よりずれた位置で生じるために起こると考えられた。これは、BUD9を破壊した菌株では、Bud32複合体が欠損してもランダムな出芽がみられないこととも矛盾しない。

著者関連情報
© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
前の記事 次の記事
feedback
Top