日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-42
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ポスターセッション
MS/MSスペクトルにおける修飾部位特異的イオンの組み合わせに基づくリン酸化部位決定法の開発
*杉山 直幸大沼 澄子塚原 麻伊冨田 勝石濱 泰
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抄録

近年、IMACや酸化金属クロマトグラフィーによるリン酸化ペプチド濃縮法と質量分析計の高性能化により、大規模なリン酸化プロテオーム解析を短時間で行うことが可能になった。一方で、MS/MSスペクトルからリン酸化部位を特定することはアミノ酸配列同定と比較して非常に困難な場合があり、MascotやSequestによる検索から決定されたリン酸化部位と目視でスペクトルを確認した場合で結果が異なる場合がある。現在までにAscoreやPTMscoreなど修飾部位同定のための確率的なスコアリング法が開発されている。しかし、これらの方法は一つのMS/MSスペクトル内に修飾部位の異なる複数のリン酸化ペプチドに由来するフラグメントイオンが混在している場合、両方のペプチドに信頼性を持たせて同定することが困難である。 本研究では最初に合成リン酸化ペプチドライブラリのnanoLC-MS/MS測定を行い、アミノ酸配列が同一で修飾部位が異なるリン酸化ペプチドの中にほとんど同じ保持時間で溶出し、分離してMS/MS測定を行うことが不可能なものがあることを確認した。そこで我々はペプチドが混在しているケースにおいても、リン酸化部位を同定することが可能なスコアリング法の開発を行った。 ノイズレベルのMS/MSピークを除去したピークリストファイルに対してMascot解析を行い、得られたリン酸化ペプチド同定結果について考えられる全ての修飾ペプチドに対して、b, y-イオンと脱リン酸化イオンのマッチングを行いprobability-based scoringを行った。最高スコアでヒットした結果とのスコア差が一定値以下の同定結果に対し、リン酸化部位が正しい事を説明するために必要なフラグメントイオンの組み合わせに着目し、新たにスコアリングを行った。 当スコアリング法により決定したリン酸化部位の妥当性について評価するために、リン酸化部位が既知の合成リン酸化ペプチド、および修飾部位が異なるリン酸化ペプチドを混合した試料のMS/MS測定を行った。MascotスコアやPTMスコアと比較した結果、当手法によってより多くの正しいリン酸化サイトの同定が可能であることが示された。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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