日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-54
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ポスターセッション
ペプチド連結型標準物質と質量分析(PCS-MS法)を用いたタンパク質の絶対量計測技術の開発
*紀藤 圭治伊藤 隆司
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抄録
 我々はこれまでに、複数のタンパク質の絶対的な存在量を系統的かつ正確に計測するための戦略として、PCS-MS法を開発してきた。本方法では、定量対象となる各タンパク質に由来するトリプシン消化ペプチドを、その上流および下流のアミノ酸数残基も含めて連結させた人工タンパク質(peptide-concatenated standard: PCS)をデザインし、これを安定同位体標識したものを定量のための標準物質として用いる。これを定量対象となるタンパク質試料に添加後、プロテアーゼによりペプチドに断片化し、質量分析により各タンパク質の存在量を計測する。PCS-MS法では、各標準ペプチドが正確に当量ずつサンプルに添加されることが保証されるとともに、標準であるPCSの消化効率が定量対象タンパク質のそれを反映することで、正確な定量が可能になる。
 本演題では、大規模な絶対量計測を実現するためのPCS-MS法の改良と出芽酵母を対象とした絶対量計測例について紹介したい。広いダイナミックレンジで大規模な定量解析を実現するには、標準として多数のPCSを異なる濃度で用いなければならない。そこで、PCSを階層的に用いることで、定量可能なタンパク質数とダイナミックレンジのスケールアップを可能にする戦略を開発した。具体的には個々のPCSに識別可能なIDペプチドを持たせておく。一方で、これらのIDペプチドを連結した2次PCSを用意する。この2次PCSにより個々のPCSの量を正確にモニタリングすることで、多数のPCSによる定量値の信頼性を確保する。また、IDペプチドのコピー数を調節することで、モニタリング可能なPCS量のダイナミックレンジを拡張する。本手法により定量可能なダイナミックレンジが一桁向上し、また独立した定量計測間での高い再現性も実現することができた。絶対量計測に成功した出芽酵母の約70種類のタンパク質について、他の解析手法による定量データやmRNAコピー数との比較についても合わせて紹介したい。
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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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