日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-58
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ポスターセッション
プロテオミクスによるラット視床下部性分化に関連する蛋白質の探索
*岩倉 聖津田 夢芽子佐野 一広内村 太一志賀 隆塚原 伸治小川 園子加藤 智啓大谷-金子 律子
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抄録

哺乳類では周生期の雄の精巣から分泌されるテストステロンにより視床下部が不可逆的変化(性分化)を起こすため、思春期以降雌雄で異なるゴナドトロピン分泌パターンや性行動パターンを示すと考えられている。しかし性差形成の詳細な分子メカニズムは未だ明らかにされていない。性差形成に機能する蛋白質は性分化期に雌雄で異なる発現をすると考えられため、本研究では性的二型核として知られる前腹側脳室周囲核(AVPv)に着目し、性分化期特異的に性差を示す蛋白質の探索を行った。具体的には、性分化期(生後1日目、PD 1)および性分化終了期(生後6日目、PD 6)の雌雄ラット新生仔脳切片からAVPvを単離して蛋白質を抽出後、発現蛋白質を雌雄間で比較した。そして性分化時期に発現に性差があり、性分化終了時には発現の性差が消失する蛋白質を探索した。本研究で用いた解析法は以下の2つである。1, CyDye DIGE Fluor saturation Dyesを用いた二次元ディファレンシャル電気泳動(2D-DIGE)とそれに続くMALDI-TOF/TOF-MS/LC-ESI-MS質量分析による蛋白質同定、2, nanoACQUITY UPLC・Synapt HD MSシステムを用いた定量的ショットガン解析。また性差が顕著であった同定蛋白質については、realtime PCRによりmRNA発現量についても雌雄で比較した。 2D-DIGE解析および質量分析からPD 1での発現に性差が見られた蛋白質スポットのうち、12スポットについて質量分析により同定することができた。同定蛋白質の内、collapsin response mediator protein-4(CRMP-4)とalpha‐internexinは雄で発現量が高く、これらのmRNA発現量も雄で有意に高かった。また、PD1で見られた蛋白質およびmRNA発現量の性差はPD 6では消失していた。一方、定量的ショットガン解析では、PD 1で発現している蛋白質として約200の蛋白質を同定した。このうち、hemoglobin alpha adult chain 2およびbeta chainはPD 1では蛋白質およびmRNA発現量ともに雌の方が有意に高かったが、PD 6では発現量の性差が消失していた。本研究により、AVPvでの性差形成に関与する可能性の高い複数の蛋白質が同定された。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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