日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-10
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ポスターセッション
トリプシン消化ペプチドのMALDIイメージング
*中西 豪山本 卓志古田 大
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抄録

生体組織切片を試料として、組織中の脂質、ペプチドやタンパク質といった生体分子の分布を描いてみせるマスイメージングの手法が医学・生化学の分野において注目を集めています。なかでもMALDI-MSを用いて行うMALDIイメージングは代謝産物のような低分子からタンパク質といった高分子までを対象として測定できるために、現在最もよく使われるマスイメージング法の一つです。このMALDIイメージング法では、対象化合物のイオン化のために『マトリックス』を使うという特性から、組織切片全体にマトリックスを均一にコーティングする必要があります。このためマトリックスを塗布する方法として、エアブラシを用いたスプレー法やケミカルプリンタ(CHIP-1000)のような微量分注装置を用いたドロップレット法が現在広く使われています。スプレー法は安価な機器で比較的簡単にマトリックスの塗布を行うことができますが、組織切片全体に対してむらなく均一なコーティングを行うためには技術的に熟練した操作を必要とします。これに対して微量分注装置を用いたドロップレット法はスポット間距離が空間分解能となる制限はあるものの、再現性の良い試薬分注が可能であり、組織切片に対するマトリックスの均一なコーティングが可能です。またこのような微量分注装置はマトリックスだけではなく、他のさまざまな試薬の分注も可能であるため、酵素溶液をあらかじめ分注しておき、酵素反応後の分析を微小領域で行うといったことも可能です。ここではラット脳組織切片を対象として、ケミカルプリンタによる酵素(トリプシン)溶液の微量分注を行い、酵素反応後に得られたペプチド断片に対してAXIMA-Performanceによるマスイメージングを行いました。その結果得られたマスイメージは脳組織の構造領域に特有の分布を示しており、それぞれのペプチド断片の由来するタンパク質の分布が推定されました。またこのうち脳組織特有の分布を示したペプチド断片に対して、MS/MS分析によるタンパク質同定を行いました。このようにケミカルプリンタとAXIMA-PerformanceによるMALDIイメージングシステムがスプレー法では困難な酵素消化断片のマスイメージング、あるいはタンパク質同定に対して有効であることが確認されました。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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