日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-9
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ポスターセッション
相間移動溶解法を用いた定量的膜プロテオーム解析法の開発
*石濱 泰増田 豪岩崎 未央冨田 勝
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抄録

膜タンパク質は疎水性が高く難溶性であるため、抽出および消化酵素による切断効率が著しく悪く、ショットガンプロテオミクスによる網羅的な解析は困難である。これらの問題を解決するため、最近、我々は消化後の試料溶液からの除去が可能な相間移動溶解剤(Phase Transfer Surfactant)を用いた相間移動溶解法(PTS法)およびCys残基における化学的切断法とのタンデム消化法を開発し、膜プロテオーム解析に適用した[1, 2]。本研究では相間移動溶解剤の更なる最適化をおこない、デオキシコール酸とラウロイルサルコシン酸の混合カクテルを見出した。さらにスループット向上及び自動化を目的とし、トリプシン固定化カラムを用いた迅速消化プロトコールの確立を検討したところ、最適化したPTS混合カクテルを用いることで、カラム通液に支障をきたすことなく15分間でトリプシン消化を完了させることが可能となった。大腸菌細胞抽出物に本法を適用し、mRNA発現量に対する可溶性タンパク質および膜タンパク質の同定タンパク質の分布比較および膜貫通ドメイン数についての同定タンパク質と対応するmRNAの分布比較を行ったところ、可溶性タンパク質に偏ることなく、膜タンパク質が同定されていることがわかった。さらに、同定タンパク質の量を、タンパク質当たりの同定ペプチド数に基づくemPAI法でセミ定量し、mRNA発現プロファイルと比較した結果、可溶性タンパク質、膜タンパク質に関わらずmRNA発現量に対し同一の相関直線が得られた。すなわち、本法を用いることにより膜タンパク質を可溶性タンパク質と同じ回収率でLC-MSMS測定に供することが可能であり、膜タンパク質も含めた全プロテオームの同時定量がemPAI法により可能となった。本発表では大腸菌遺伝子変異株の定量的膜プロテオーム解析結果を報告するとともに、発現している全タンパク質に対するプロテオーム解析の可能性についても報告する。[1] Masuda et al. J. Proteome Res., 2008, 7, 731-40. [2] Iwasaki et al., J. Proteome Res., 2009 Apr 6. [Epub ahead of print]

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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