日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-70
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ポスターセッション
血清中の膀胱癌マーカー候補ペプチドの探索
*斎藤 達也川島 祐介相野谷 学丸橋 正弘南田 諭大草 洋松本 和将馬場 志郎佐藤 雄一前田 忠計小寺 義男
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抄録

膀胱癌は罹患者、死亡数ともに尿路がんの中で最も多い。さらに悪性度の高いものは転移が早く、悪性度の低いものであっても尿路内再発を繰り返し悪性度の高いものに変化する可能性がある。しかし現在、確実な診断法は膀胱内視鏡検査のように患者に負担がかかり、苦痛を伴うものに限られている。そのため、浸襲が小さく簡便に検査できる血中診断マーカーを発見できれば非常に有用である。 本研究では分子量2万以下の低分子量タンパク質やペプチド(以下ペプチドと総称する)を対象として、膀胱癌診断マーカー候補ペプチドの探索を行った。近年の研究では各種癌ごとに特異的なプロテアーゼを分泌することが報告されており、これら特異的プロテアーゼにより切断された血清中のタンパク質断片を検出することで、特定の癌のみを診断する特異度の高い診断マーカーとなる。さらに、血清中のペプチドにはホルモン、サイトカインなど細胞間、組織間の情報伝達など重要な働きを担う物質が含まれているため、分析することができれば発症メカニズムの解明や医薬開発のための重要な情報を得ることが期待される。 しかし、血清は総タンパク質の99%をアルブミン、IgGなどの22種類の高存在量タンパク質が占めている。そのため、残りの1%に含まれるペプチドを詳細に分析するためには、高存在量タンパク質を除いてペプチドを抽出する技術が必要不可欠である。しかし、アルブミンなどのキャリアタンパク質と結合しているペプチドが存在するため、従来法による高存在量タンパク質の除去では同時にこうしたペプチドも同時に除去されてしまう可能性が高い。 当研究室ではこれまでに血清中からペプチドを高効率に、再現性良く抽出する方法を開発し、逆相HPLCと、MALDI-TOF-MSと組み合わせて疾患特異的ペプチドの探索を行ってきた。この分析法は既に大腸癌患者血清の分析に応用され、診断マーカー候補ペプチドの発見に成功しており、その有用性は既に実証されている。 本研究では、この分析法を用いて膀胱癌患者の術前、術後、健常者の血清を比較解析した。その結果、複数の診断マーカー候補ペプチドの探索に成功した。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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