日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-77
会議情報

ポスターセッション
コンブ目海藻の高温耐性機構に関わるプロテオーム解析 -ゲノム未解読の生物へのプロテオミクス・アプローチ-
永井 宏平池上 春香木村 創四ツ倉 典滋*森本 康一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

[背景と目的] 近年の地球温暖化により、多くの生物の勢力地図が変わろうとしている。日本沿岸では各地で磯焼けにともなう種多様性の消失が進んでおり、温暖化対策が急務である。そのために我々は、高温耐性をもつコンブ目海藻の分子機構をプロテオーム解析により解明することを目的とした。またコンブ目海藻は多くがゲノム未解読であり、そのような生物のプロテオーム解析のモデルケースとしての手法確立も目指した。特に本発表では、高温ストレスで発現量が変化するタンパク質の同定を試みたので報告する。
[材料と方法] コンブ目海藻カジメ(Ecklonia cava)とクロメ(Ecklonia kurome)の葉状部に含まれるタンパク質をエタノール/フェノール法により抽出し、二次元電気泳動(pI4-7、10% polyacrylamide gel、タンパク質量 200 μg)により分離した(文献1)。タンパク質115スポットをゲル内トリプシン消化し、MALDI-TOF/TOF型質量分析計によりMSと MS/MSスペクトルを得た。MS/MS スペクトルからアミノ酸配列を推定し(De novo sequence)、その推定配列と相同性をもつタンパク質をMS Blastにより検索した。さらに、10°C,20°C,30°Cで培養したカジメ個体のタンパク質を抽出して二次元電気泳動ゲルに展開した。各処理区でタンパク質発現量を定量比較し、増減のあったタンパク質を同様に決定した。
[結果] 画像解析により、各二次元電気泳動ゲルから約700スポットをCBB染色により検出した。115スポットのタンパク質をMascot検索とMS Blast検索した結果、96スポット(84%)のタンパク質を同定することに成功した。高水温で誘導されるタンパク質はHSP70, HSP90, vanadium dependent bromoperoxidase (vBPO)などで、その発現量は増加していた。よって、コンブ目海藻にも高等植物と同様のHSPファミリータンパク質による高温耐性機構が考えられ、さらにvBPOなどの海藻特異的なタンパク質が強く関与する特異な高温耐性メカニズムを有する可能性が示唆された。
文献 1) K. Nagai, et al., Electrophoresis 29, 672-681 (2008)

著者関連情報
© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
前の記事 次の記事
feedback
Top