日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-80
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ポスターセッション
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を検出するための蛍光ペプチドの創製
*鈴木 祥夫横山 憲二
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抄録

【はじめに】血管新生は癌の増殖と転移に密接に関わっていることから、近年、その分子生物学的研究が盛んに行われている。血管新生に関与する因子として、エフリン、アンジオポエチン、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などが知られている。このうちVEGF はその中心に位置し、癌の増殖・転移、増殖性糖尿病性網膜症、慢性リウマチなどに深く関わっている。このため、その成果を医療や健康管理の現場で役立てるためには、VEGF を、簡便,迅速かつ長時間にわたりモニタリングする技術を確立しておくことが重要となってくる。
 本研究では、上記性能を有し、かつVEGF 検出に用いられている抗原-抗体反応の欠点である再利用性を補うために、VEGF 受容体のVEGF 結合部位から構成される新規蛍光ペプチドを系統的に設計・合成し、VEGF との相互作用について評価を行った。
【結果と考察】PBS 緩衝液中において、ペプチド単独は弱い蛍光を発するが、ペプチドとVEGF を室温で混合すると、瞬時に蛍光強度の増加が観察された。これは、ペプチドとVEGF が複合体を形成することによって、蛍光発色団近傍の環境が疎水的になったためであると考えられる。検量線については、良好な直線関係が得られた(r2 > 0.998)。また、妨害物質(無機塩、還元剤など)の影響について検討したところ、これらの物質が過剰量に存在していても、反応に影響を与えないことが分かった。さらに、金薄膜上にコーティングした自己組織化単分子膜表面のカルボキシル基と、ペプチド中のリジン残基をカップリングすることによって、ペプチドを基板表面に固定化した後、ペプチドとVEGF との相互作用をSPR 法および蛍光法を用いて検討を行った。その結果、高い親和性と蛍光強度の増加が見られた。このような試薬を用いることにより、従来よりも手軽にかつ短時間でVEGF の分析を行うことが出来ると考えられる。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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