日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-79
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ポスターセッション
miR-17-92 cluster の肺癌における新規標的タンパク質の同定を目的としたプロテオーム解析
*神崎 浩孝大内田 守伊藤 佐智夫田丸 聖治花房 裕子清水 憲二
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抄録

【目的】マイクロRNA(miRNA) は約20-23塩基の内在性のnon-coding RNAであり、その発現異常と癌との関連が示唆されている。中でもmiR-17-92 clusterは肺癌や悪性リンパ腫などにおいての過剰発現が報告されており、癌遺伝子様の機能を有していることが示唆されている。miRNAは標的とするmRNAの3’UTRの相補的な配列を認識し結合することにより、翻訳のプロセスを抑制的に制御するとされている。しかしながら、miRNAの直接的な標的に関する報告は少なく、miRNAが癌化に及ぼす影響は標的とメカニズムにおいて不明瞭であるといえる。今回我々は、肺癌におけるmiRNAの直接的な標的の同定を目的とし、肺癌培養細胞を対象に、2次元電気泳動によるディファレンシャル・ディスプレイと質量分析計を用いたプロテオミクス解析を行った。 【方法と結果】35種類の癌培養細胞に対してTaqman Real-time PCRを行うことによってmiR-17-92 clusterを高発現している肺癌培養細胞を2種類同定した(SBC-3, LK-79)。このうちSBC-3細胞に対しanti-miRNA locked nucleic acid (LNA)を用いてmiR-17-92 clusterの発現を抑制し、抑制効果と作用時間を検討した。anti-miRNA LNAの作用群と非作用群からタンパク質を抽出し、IPG Dry strip を用いた2次元電気泳動(2-DE)により分離を行った。SYPRO ruby protein gel stain(Invitrogen社)を用いて蛍光染色し、FLA-3000(FUJIFILM社)にて検出したゲルイメージ像について、画像解析ソフトPDQuest ver.8.0を用いてスポットの検出及び定量比較を行い、両群間のタンパク発現量の差を比較解析した。検出された2387スポットのうち、1866スポットが有効解析スポットであった。そのうち発現量に1.5倍以上の上昇が認められた347スポットのうち、液体クロマトグラフィー質量分析計;ナノフローLC/MS/MSシステム(Agilent社)を用いて解析を行い、112種類のmiR-17-92 cluster標的タンパク質候補を同定した。 【結語】miR-17-92 clusterを高発現している肺癌培養細胞株(SBC-3)に対するプロテオミクス解析によって、miR-17-92 clusterの標的となる可能性があるタンパク質を同定した。同定されたタンパク質についてその遺伝子の3’UTR領域におけるmiRNA標的配列の確認、Luciferase reporter assay、Western blottingを行うことでさらに解析を進めている。今回の検討によりえられた候補タンパク質の機能解析を進めていくことによって、miRNAが癌化に及ぼす影響とメカニズムの解明が期待できる。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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