日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: S2-5
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タンパク質研究から医薬品開発への道
アルツハイマー病治療薬開発を目指したγセクレターゼの構造活性相関
*富田 泰輔
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抄録

遺伝学・生化学的解析から、アミロイドβ蛋白(Aβ)産生及び蓄積過程がアルツハイマー病(AD)発症機序に深く関与していることが示唆されており、脳内におけるAβの存在量及び蓄積過程の制御は、発症機序に基づいたdisease-modifying therapyとなることが期待されている。γセクレターゼはAβ産生経路においてC末端側の切断に関与し、Aβの凝集性を決定することから、重要な創薬標的分子と考えられてきた。近年になり、γセクレターゼの分子的な実態が明らかとなり、その酵素学的な解析と相まって、特異的な阻害剤がAD治療薬として開発され始めている。一方でγセクレターゼはNotchなど蛋白分解依存性シグナル伝達機構に必須な分子であることが明らかとなり、単純な疎外は副作用が懸念されている。したがってγセクレターゼの構造活性相関の理解は、その切断機構の解明とAβ産生特異的な活性を持つ化合物のラショナルデザインにつながる可能性があると考えられる。しかしγセクレターゼはプレセニリン、ニカストリン、Aph-1、Pen-2を最小構成因子とする高分子量膜蛋白複合体であり、その構造解析は困難を極めている。そこで我々は生化学的な構造活性相関解析法の導入や、化合物を基点にしたケミカルバイオロジーなどを取り入れ、AD治療薬として有用なγセクレターゼの構造活性相関研究を進めているので紹介したい。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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