医療福祉政策研究
Online ISSN : 2433-6858
パンデミックがアメリカの医療労働者にもたらしたもの
感染拡大はじめの5ヶ月を追って
早川 佐知子
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 4 巻 1 号 p. 13-26

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抄録

 本研究は2020年3月から2020年7月までの期間を対象に、アメリカCOVID-19に関する論点の整理を行い、そこから主として、医療労働者に関する出来事を分析することを目的とする。その方法として、病院経営・医療政策の専門誌であるModern Healthcareのニュースレター“COVID-19 Coverage”を用いた。  アメリカでは早い段階で多くの医療労働者がfurlough(一時帰休)、レイオフされた。そして、これらの処遇や、勤務先医療機関の不十分な感染症対策などに抗議するための運動も活発であった。労使関係における出来事をまとめると、以下のようになる。第一に、感染者が増え始めた初期段階の3月に、最も多くのレイオフが行われた。最前線の医療職は不足し、過重労働になる一方、管理部門の職員を中心にレイオフを実施した医療機関が多かった。第二に、人手不足や保護用品の不足の解消、危険手当の支払いなどを求めて、いくつかの労働争議が発生した。これまで無関心だった層も労働組合に関心を示し始めている。第三に、労働争議は看護師のようなマジョリティ職種のみならず、さまざまな職種で行われた。一般的に言って低賃金である看護補助者もストライキの末、労働協約の改善を勝ち取った。

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© 2021 日本医療福祉政策学会
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