抄録
本稿では、2025年年金改革において争点となった基礎年金給付の「底上げ」策を中心に、年金改革がどのような戦略と政治過程を経て成立したのかを分析した。2025年改革は、厚生年金の適用拡大という制度再調整的改革と、公的年金の財政方式の転換による基礎年金給付の「底上げ」という制度転換的改革を含んでいたが、後者は一部世代の給付減少を伴ったため不人気な改革であった。改革戦略は、現行制度が改革されない場合の将来の基礎年金給付をリファレンス・ポイントとして、改革が実行されればその給付水準が上昇するというものであった。与党内の選挙リスク回避から基礎年金給付の「底上げ」案は閣議決定段階で削除された。その後、国会審議で立憲民主党が参画し、代償的補償措置を付した形で同案は付則として復活・成立するに至った。改革は結果として成立したが、政党間の手柄争いの中で十分な政治的評価を得ることはできず、基礎年金水準の妥当性や今後の制度設計は引き続き課題として残された。