日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
原著論文
当院で検出された3大起炎菌の薬剤感受性の過去10年間の推移について
内薗 明裕
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2021 年 1 巻 1 号 p. 61-69

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抄録

過去10年間に当院を受診した急性及び慢性の急性増悪感染症患者から得られたすべての耳漏,鼓膜切開液,鼻汁,鼻咽腔,中咽頭検体より検出されたいわゆる3大起炎菌(Streptcoccus pneumoniaeHaemophilus influenzaeMoraxella catarrhalis)の薬剤感受性の推移を後方視的に検討した。

肺炎球菌に関しては,Aminobenzylpenicillin(Ampicillin:ABPC)に対してはほぼ感性菌となっているもののPenicillin G(PCG)に対する感受性では,PSSP(MIC ≦0.06)とPISP(MIC ≦0.125 ≦1)がほとんどで,PRSP(MIC≧2)の検出はごくまれとなってきていた。M. catarrhalisのABPCに対する感受性は,ほぼすべての株でβラクタマーゼが産生されているために,100%が耐性化(R判定)しており,H. influenzaeのABPCに対する低感受性率(耐性菌(R)と中等度耐性菌(I)の合計の比率)は,50%からこの10年間に次第に増加しており,ここ5年間は70%前後となっていた。

憂慮すべきことに,H. influenzaeの低感受性率(I+R)の増加傾向は,ABPCに対するだけではなく,従来著効するとされていたTosufloxacin(TFLX)やTebipenem Pivoxil(TBPM-PI)に対しても認められるようになってきており,直近の3年間では,ABPCに対する低感受性率が高止まりのままなのに対して,Cefditren Pivoxil(CDTR-PI)に対する耐性株(R)の割合が急激に増加し,2020年では,検出されたH. influenzae 81株すべてがCDTR-PI耐性(R)となっていた。

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© 2021 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
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