2023 年 3 巻 4 号 p. 117-124
昨今,世界的に薬剤耐性菌を増やさずに既存の抗菌薬をいかに有効に活用するかという「抗菌薬の適正使用」の重要性が高まっている。本邦でも2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016–2020)」が作成され,国,地域,医療機関および関連学会などさまざまなレベルでの啓蒙活動と対策が行われてきた。これを受けて日本感染症学会,気道感染症抗菌薬適正使用委員会では,2020年「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」を発表し,その後の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響も鑑みて,近々「改訂版」が発表されることとなっている。本稿ではこの改訂版について触れるとともに,昨今の抗菌薬使用状況の変化について概説した。さらに2022年から保険収載された「耳鼻咽喉科小児抗菌薬適正使用支援加算」の考え方について解説する。小児科においては2018年から「小児における抗菌薬適正使用加算」が算定可能であったが,2022年からは耳鼻咽喉科においても同種の加算が設けられた。この加算算定のためには,「地域感染症対策ネットワーク」活動に参加するか,感染症にかかる研修会に定期的に参加した上で,「療養上必要な指導等を行い,文書により説明内容を提供」する必要がある。