2023 年 3 巻 4 号 p. 125-131
ウイルス感染防御に対するアプローチは,ワクチンや抗ウイルス剤といった既存医療が第一選択であることは言うまでもないが,そのインフラのハードルの高さや開発期間の長さは常に課題であった。本稿では,ヒトのウイルス感染防御メカニズムに着目し,世界で初めてとなるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化させる乳酸菌の発見・効果について述べる。ヒトの免疫系において外界のウイルスの侵入を感知し,IFN産生で初期応答を行いつつ,ウイルス抗原提示により獲得免疫を誘導する後期応答を行うという中心的役割を果たすのがpDCである。そこで様々な自然免疫の刺激物質を豊富に含む乳酸菌を題材として,pDC活性化乳酸菌を公共の微生物バンクをソースとして探索し,見つかったのが,プラズマ乳酸菌である。
プラズマ乳酸菌はpDC活性化の指標であるI型IFNの産生をリードアウトに選抜された菌株であるが,その後の動物実験により,少量の経口摂取によりパラインフルエンザ・ロタ・デングの様々なウイルス感染に対して著効を示すことが確認された。また,健常人を対象とした臨床試験において,冬季のインフルエンザ様症状の軽減,デング熱・一般感染症への効果も検証されている。最近では,COVID-19に対する基礎・臨床試験が進行しており,結果がまたれる。
さらに感染症に対する効果だけでなく,マウスにプラズマ乳酸菌を投与し,免疫機能を賦活させ続けることによる抗老化作用も確認されている。