2025 年 5 巻 3 号 p. 147-151
自然リンパ球(innate lymphoid cells: ILC)は,抗原特異的な受容体を持たず,非特異的刺激に迅速に応答してサイトカインを分泌する自然免疫系のリンパ球群である。中でも,2型自然リンパ球(group 2 ILC: ILC2)は,上皮由来のアラーミンに応答して活性化され,2型サイトカインを産生することで,好酸球の動員,粘液分泌の増強,気道過敏性の亢進など,アレルギー性炎症の初期誘導,増幅に深く関与する。
ILC2は粘膜バリア組織に局在し,扁桃やアデノイドにおけるILC2の存在が確認されている。また,ウイルス感染後の乳児鼻腔内ILC2の増加が確認されており,その活性化が持続的な2型炎症や喘息リスクに寄与する可能性がある。多様なアレルギー性疾患の病態形成に関与しているILC2は,疾患の重症度や治療抵抗性との相関も報告されている。ILC2はこれまでアレルギー疾患の治療戦略の中核を担ってきたグルココルチコイドによる抑制に対して抵抗性を示す場合があり,難治性喘息の病態に関与することが注目されている。また,新規制御因子としてTNFスーパーファミリーや神経・代謝性因子によるILC2の活性調節も明らかとなりつつあり,アレルギー病態における神経-免疫クロストークの存在が示唆される。
近年では,ILC2の活性化経路を標的とした新規治療法の開発も進んでおり,2型サイトカインやアラーミンを抑制する生物学的製剤が臨床応用または治験段階にある。ILC2は自然免疫と獲得免疫の橋渡し役として機能し,感染症やワクチン応答,腫瘍免疫との関連も期待され,今後の免疫疾患治療における中心的標的となる可能性が高い。