2025 年 5 巻 3 号 p. 153-156
咳嗽が3週間以上持続する場合,感染症以外の疾患の関与が強く疑われる。なかでも胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)は,重要な鑑別疾患の1つである。GERDは典型的な症状である胸やけや呑酸とは別に,咳嗽を非典型症状として呈することがある。特に,胃内容物が咽喉頭まで逆流する咽喉頭逆流症(laryngopharyngeal reflux disease:LPRD)では,咳嗽が主要症状となることがあり,プロトンポンプ阻害薬(PPI)による治療効果が乏しく診断が困難となる場合がある。近年,下咽頭インピーダンス検査(hypopharyngeal multichannel intraluminal impedance:HMII)が,LPRを客観的に捉える手段として注目されており,LPRD関連慢性咳嗽の診断にも有用である。HMIIによりLPRDが確認された場合,PPIを含む保存的治療に抵抗する症例に対しても,逆流防止術が有効な治療選択肢となり得る。