2009 年 55 巻 Suppl.1 号 p. S3-S10
頸部郭清術において、副神経が切除された場合はもちろん、副神経が保存されていてもその多くが、筋鉤をはじめとした牽引操作などにより、副神経麻痺を来している。よって当院では頸部郭清術後は、副神経の保存、切除にかかわらず、僧帽筋麻痺の程度を評価し、リハビリテーションの必要性を検討している。僧帽筋麻痺の程度を知るためには、上肢自動外転角度測定や肩甲骨外側偏位、下垂を視診、触診で評価することが有用である。実際のリハビリテーションは不動による肩周囲関節の拘縮予防が主であり、肩関節可動域訓練 (ROM 訓練) が重要である。ROM 訓練は肩甲骨の外側偏位・下垂を矯正するため、上肢の重力を除き肩甲骨が内転位になるような仰臥位や約 30°ギャッジアップしたベッド上から開始する。副神経保存例では約 6 カ月以内に上肢自動外転角度が正常化する。副神経切除例でも ROM 訓練、代償筋の鍛練などのリハビリテーションにより日常生活に大きな支障がない程度の上肢運動が得られる。