耳鼻と臨床
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原著
水痘帯状疱疹ウイルスの関与が示唆された特発性混合性喉頭麻痺の1例
三枝 華子中村 育子若山 貴久子一ノ瀬 篤司峯田 穣治室伏 利久
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2010 年 56 巻 2 号 p. 60-64

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抄録

混合性喉頭麻痺の約半数は原因が不明で特発性として分類され、治療法も確立されたものはない。今回われわれは、急性発症の嚥下障害を主訴とする特発性混合性喉頭麻痺にステロイドを投与し良好な結果が得られ、原因として水痘帯状疱疹ウイルス (varicella zoster virus : VZV) の関与が示唆された症例を経験したので報告する。症例は 69 歳、男性。主訴は嚥下障害、嗄声。初診時に左声帯麻痺、下咽頭梨状陥凹の唾液の貯留、左軟口蓋の挙上不良、左側咽頭の知覚の軽度低下を認めた。全身検索にて原因疾患を認めず、特発性混合性喉頭麻痺と診断しステロイド投与を行い、麻痺、嚥下障害の改善が得られた。経過中に抗 VZV 抗体価の変動を認めた。特発性混合性喉頭麻痺の中には VZV 再活性化による神経炎が潜在することを初診時から念頭に置き原因検索に当たるとともに、早期のステロイド投与あるいはステロイドと抗ウイルス剤の併用投与を考慮する必要があると考えられた。

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© 2010 耳鼻と臨床会
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