抄録
Gradenigo 症候群は中耳炎、三叉神経痛、外転神経麻痺を三徴候とする錐体尖端含気蜂巣への炎症波及で生じるまれな中耳炎合併症である。近年では中耳炎に対する知識の普及や診断の進歩、適切な抗菌薬使用により発症はまれとなった。本症例では、妊娠初期に発症した急性中耳炎に対し適切な抗菌薬投与が行われず、錐体尖に炎症が波及し生じたと考えられた。また、Gradenigo 症候群に対しては抗生剤やステロイド剤の点滴治療が考慮されるが、妊婦であったためまず抗生剤内服のみで治療を開始した結果改善が得られ、追加治療は必要としなかった。妊婦への抗生剤使用に対する知識の必要性、まれな疾患である Gradenigo 症候群の存在について改めて考えさせられた 1 例となった。