2011 年 57 巻 Suppl.1 号 p. S123-S128
Multifrequency tympanometry (MFT) の音響コンダクタンス (G) 幅は内耳圧を反映し、圧の上昇により幅が増大するが、そのメカニズムは不明である。今回、蝸牛有毛細胞のイオン電流変化による共振周波数の変化が原因の一つと推定し実験を行った。有毛細胞では細胞興奮により細胞膜電位が振動 (oscillation) するが、その共振周波数にはK電流が大きく関与するため、K電流の圧負荷による変化を観察した。パッチクランプ法のホールセルモードにて内有毛細胞のK電流を測定し、電極に陰圧を加え内リンパ水腫の状態を模倣すると、K電流は増大した。逆に陽圧を加えるとK電流値の低下を認めた。これらの変化は可逆性であった。K電流の変化がMFTのG幅に変化をもたらすメカニズムについて考察した。