耳鼻と臨床
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原著
鼻前庭炎の起炎菌について
岸本 麻子井野 千代徳多田 直樹南 豊彦井野 素子田辺 正博
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2013 年 59 巻 3 号 p. 108-114

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抄録
鼻前庭炎患者 62 例の細菌検査を行った。その結果、黄色ブドウ球菌が 90.3%と圧倒的に多く MSSA は 40 例(64.5%)、MRSA は 16 例(25.8%)であった。他の細菌では CNS が 3例(4.8%)と続いたが、副鼻腔炎の起炎菌とされる菌種はまれであった。口角炎の起炎菌は唾液中に存在する菌であるのに対して、鼻前庭炎は鼻汁中の菌によって発症するものはまれで常在菌が何らかの刺激で活性化されて発症するものと考えた。活性化する原因は鼻前庭炎の発症時期が冬季と花粉症の時期に多く、夏季に少ないことより鼻炎、感冒との関連で鼻を触ることが原因と推察した。MSSA で最も有効な抗生剤は FMOX(100%)で、次いで MINO(97.5%)、CAM(72.5%)であった。MRSA の中でも MINO が有効であったのは 16 例中 10 例(62.5%)であり、60 歳以上の鼻前庭炎症例では 6 例(37.5%)すべてが MINO に感受性のない MRSA であった。
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© 2013 耳鼻と臨床会
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