耳鼻と臨床
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59 巻, 3 号
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原著
  • 原口 美穂子, 後藤 穣, 若山 望, 吉野 綾穂, 村上 亮介, 草間 薫, 大久保 公裕
    2013 年59 巻3 号 p. 93-100
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/01
    ジャーナル フリー
    過去 2 年間に当科アレルギー外来にてアレルゲン免疫療法を開始した 134 例を対象とし、年齢性別、治療抗原、治療内容、注射回数、副作用、治療効果につき報告した。患者の年齢は 30 歳から 50歳に多く、人数に男女差はみられなかった。治療抗原はスギ単独が 54 例 (40.3%)、スギ+ハウスダストが 36 例 (26.9%) と多かった。各抗原とも 2 段階、3 段階のステップアップを行ったが、開始量、維持量には個人差がみられた。合計 3,481 回の注射で 5回 (0.14%)、134 例中 5 例 (3.7%) に副作用がみられた。脱落症例は 22 例 (16.4%) であり、うち 11 例が抗原増量中の脱落であった。スギのアレルゲン免疫療法を行った患者のうち約 27.7 %が 2012 年スギシーズン中の薬物療法を必要としなかった。
  • 黒田 建彰
    2013 年59 巻3 号 p. 101-107
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/01
    ジャーナル フリー
    当医院では過去 20 年間に、聴神経の血管圧迫症候群を疑った耳鳴 167 例を経験した。数秒ほどの断続的耳鳴で、日に数回 - 数十回生じる耳鳴であった。うち 163 例でテグレトールによる治療を行った。男女比は 57:110 と女性に多く、発症年齢は 61 歳以上が 57%(95/167)と高齢者に多かった。片側性耳鳴が98%(164/167)とほとんどであり、耳鳴側と反対側の平均聴力の差はほとんど認められなかった。テグレトールが効果を示し、耳鳴消失が 69 例、著効が 26 例で、合計で 58%(95/163)であった。高齢者(61 歳以上)では消失と著効の合計が 73%(66/91)で、60 歳以下の 40%(29/72)よりテグレトールの効果が高かった。めまいを伴う群では消失・著効が 86%(24/28)で、耳鳴単独群の 53%(71/135)より効果が高かった。長期的観察では、数日から数年続く耳鳴を 1 年 - 数年の間隔で繰り返す症例が多かった。
  • 岸本 麻子, 井野 千代徳, 多田 直樹, 南 豊彦, 井野 素子, 田辺 正博
    2013 年59 巻3 号 p. 108-114
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/01
    ジャーナル フリー
    鼻前庭炎患者 62 例の細菌検査を行った。その結果、黄色ブドウ球菌が 90.3%と圧倒的に多く MSSA は 40 例(64.5%)、MRSA は 16 例(25.8%)であった。他の細菌では CNS が 3例(4.8%)と続いたが、副鼻腔炎の起炎菌とされる菌種はまれであった。口角炎の起炎菌は唾液中に存在する菌であるのに対して、鼻前庭炎は鼻汁中の菌によって発症するものはまれで常在菌が何らかの刺激で活性化されて発症するものと考えた。活性化する原因は鼻前庭炎の発症時期が冬季と花粉症の時期に多く、夏季に少ないことより鼻炎、感冒との関連で鼻を触ることが原因と推察した。MSSA で最も有効な抗生剤は FMOX(100%)で、次いで MINO(97.5%)、CAM(72.5%)であった。MRSA の中でも MINO が有効であったのは 16 例中 10 例(62.5%)であり、60 歳以上の鼻前庭炎症例では 6 例(37.5%)すべてが MINO に感受性のない MRSA であった。
  • - 患者による日常生活の障害の改善から評価した治療効果の比較 -
    松田 和徳, 関根 和教, 佐藤 豪, 雫 治彦, 植村 哲也, 武田 憲昭
    2013 年59 巻3 号 p. 115-121
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/01
    ジャーナル フリー
    今回、われわれはめまいによりもたらされる日常生活の障害の程度を客観的に評価できるアンケートを用い、ジフェニドールとベタヒスチンの治療効果を比較検討した。ジフェニドールは 4 週間投与で、めまいによる社会活動性の障害、めまいを増悪させる身体の動き(頭位、視覚)、めまいによる身体行動の制限(全般的、体動)、めまいによる感情障害、めまいによる対人関係の障害、めまいによる不快感のすべての因子を有意に改善させた。ジフェニドールは抗めまい作用に加えて制吐作用を持つことから、めまいによる機能障害およびめまいに伴う不快感を改善させ、その結果、めまいによる社会的障害およびめまいによる感情障害を改善させたものと考えられた。ベタヒスチンは 4 週間投与で、めまいによる社会活動性の障害、めまいによる対人関係の障害を有意に改善させたが、その他の因子には有意な改善を認めなかった。薬理作用の点から、ベタヒスチンは 2 カ月以上の長期投与を推奨している報告もあり、めまいにより引き起こされる日常生活の障害に対するベタヒスチンによる効果を明らかにするためには、さらに長期間の投与による検討が必要であると考えられた。
  • 久保 和彦, 佐藤 方宣, 小宗 静男
    2013 年59 巻3 号 p. 122-127
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/01
    ジャーナル フリー
    メニエール病治療薬であるイソソルビドは、苦く特有な味であるために、服用に困難を極める弱点がある。これまで多様な方法が試みられたが、良好な服用法は確立されていない。その服用感を改善するため、健常人 33 名にイソソルビド+ある種の溶液の組み合わせ ( 1 : 1 混合) を 6 種類試飲してもらい、服用しやすさを 5 段階評価で検討した。原液の味に関しては苦味の評点が高かった。服用感については、原液の平均評点が 3.18 だったのに対し、オレンジジュースは 4.12、リンゴ酢は 3.12、炭酸水は 3.30、コカ・コーラTM は 3.76、ポカリスエットTMは 3.61、緑茶は 2.82 と、オレンジジュース、コカ・コーラTM、ポカリスエットTMは有意に服用しやすさを改善したが、緑茶は逆の傾向が見られた。患者がイソソルビドの服用しにくさを訴えた場合は、オレンジジュースかコカ・コーラTM、ポカリスエットTMで倍量希釈することで服薬コンプライアンスを上げられる。
  • 冨山 道夫
    2013 年59 巻3 号 p. 128-133
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/01
    ジャーナル フリー
    上咽頭に細菌感染を合併した A 型インフルエンザウイルス感染症の 2 例を経験した。いずれの症例もインフルエンザの迅速診断で A 型インフルエンザウイルス陽性、内視鏡検査で中咽頭に炎症所見は認めないが上咽頭に発赤と膿を認めた。血液検査で好中球数優位の白血球数上昇、上咽頭の細菌検査で Haemophilus parainfluenzae が 5 +検出され上咽頭に細菌感染を合併した A 型インフルエンザウイルス感染症と診断した。2 例ともに中咽頭所見は正常で咽頭痛は高度ではなく、日常臨床においては抗インフルエンザ薬の投与のみで経過観察される可能性のある症例である。自覚症状、全身所見よりインフルエンザと考えられても、咽頭痛を訴える場合はインフルエンザの迅速診断のみでなく上咽頭の細菌感染の合併を念頭におき内視鏡検査を行う必要があると思われた。
  • 冨山 道夫
    2013 年59 巻3 号 p. 134-140
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/01
    ジャーナル フリー
    上咽頭に炎症所見を認めたインフルエンザウイルス感染症、アデノウイルス感染症、伝染性単核球症の 3 例を経験した。A 型インフルエンザウイルス感染症は上咽頭の発赤、アデノウイルス感染症、伝染性単核球症は上咽頭の白苔を認めた。ウイルス性の上咽頭炎と細菌性の上咽頭炎の鑑別は内視鏡所見のみでは困難で、ウイルス感染症の迅速診断キットによる検査や種々の血液検査を組み合わせて慎重に鑑別する必要があると思われた。
臨床ノート
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