2014 年 60 巻 1 号 p. 24-28
甲状腺腫瘍に対する穿刺吸引細胞診後に急速に甲状腺腫脹を来した症例を経験したので報告する。症例は 71 歳、男性。左前頸部腫瘤を自覚し、他院にて甲状腺左葉の腫瘤を指摘され精査目的に当科紹介となった。22 G 注射針を用いて腫瘍の穿刺吸引細胞診を施行した。穿刺後約 3 時間で前頸部の腫脹、疼痛が出現した。翌日のエコーでは左葉の腫瘤は径 30 mm から 40 mm に増大し内部は不均一に変化していた。ステロイドおよび抗生物質を内服投与したところ数日で腫脹、疼痛の改善を認めた。後日甲状腺左葉切除を行った。病理組織診断では腫瘍内部の炎症細胞浸潤と細菌コロニーの形成を認めたが、腫脹の原因を特定するには至らなかった。文献的な報告も含め考察を行った。