耳鼻と臨床
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原著
心因性難聴に心因性構音障害を併発した 1 例
村上 健深浦 順一永田 里恵末田 尚之中川 尚志
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2014 年 60 巻 1 号 p. 35-41

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抄録

心因性が原因と考えられる構音障害と難聴を併発した 1 例を経験した。症例は、51 歳、女性である。2 年前より右難聴が出現し、4カ月前より左難聴が徐々に進行、近医にての加療で聴力不変であった。同時期より家族に構音障害の指摘を受け、福岡大学病院耳鼻咽喉科受診となった。鼓膜所見は正常、純音聴力検査にて両側重度難聴を示したが、聴性脳幹反応も 30 dB で反応がみられた。発声発語器官の器質的異常と中枢性神経疾患の所見はなかった。構音の誤り方は浮動的だが、主に硬口蓋破裂音が歯茎破裂音に置換していた。短文、自由会話において誤り頻度は下がり、正常構音も認められた。以上より機能性の構音障害と考えられた。家庭内では知的障害の実弟のために社会的制限を受け、職場における対人関係によるストレスを感じていた。SPECT による安静時脳血流検査では両側前頭葉に軽度の血流低下を認め、鬱症状を裏付ける結果であった。以上より、心因性構音障害が考えられた。

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© 2014 耳鼻と臨床会
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