抄録
近年、頭頸部がんに対する放射線治療、化学放射線療法はもはや標準的な治療オプションとして定着しつつある。手術と対峙する放射線治療は 1980 年代から今に至るまで目覚ましい技術革新とともにその立ち位置を変えてきた。1980年代 − 1990 年後半までは 2 次元治療計画による放射線治療 : 2D-RT が主として用いられ、腫瘍を体積のある標的とは認識できないため、アイソセンターへの処方線量で周囲を推測するしかなかった。2000 年代に入り 3 次元治療計画による放射線治療 : 3D-RT が普及し、2 Gy という処方の意味も「点処方」から「Volume 処方」へと変化し、Target 以外の臓器にどれぐらいの線量が投与されているか把握できるようになってきた。現在その技術を応用したものに強度変調放射線治療(IMRT)があり、いわゆる「当てたいところに当て、避けたいところを避ける」という計画が可能になった。IMRT は理想に近い手法ではあるが従来の治療法に比べて多くのマンパワーを必要とし、日本の現状を鑑みると安易に多くの施設に導入できる状況ではない。今後工学系の進歩がなされた際には更なる治療成績の向上が見込まれ、手術治療との位置関係に再考が必要になる時期が来る可能性もある。われわれ頭頸部腫瘍関係者は手術治療、非手術治療の双方の変化に敏感になり、いつの時代もバランスのとれた治療選択ができるよう鍛錬が求められる。