2015 年 61 巻 3 号 p. 105-111
セラミック人工耳小骨は組織親和性が高く、生体防御反応を示さないとされている。しかしながらセラミックに柔軟性がないことから、鼓膜の位置の浅在化などの術後性変化により耳小骨連鎖が外れ、聴力改善が思わしくない場合も存在する。特にツチ骨柄が残存しない場合には通常のセラミック人工耳小骨は安定性が悪く、鼓膜あるいはアブミ骨からセラミック人工耳小骨が外れてしまうことが多いといわれている。それを防止する意味で軟骨接合型人工耳小骨が市販され臨床応用されている。しかし、この軟骨接合型の人工耳小骨を利用すると、軟骨を採取するという余分な術式が追加されるため、日帰りあるいは 1 泊の入院手術を行っていたわれわれの手術方法には適合しないと考え、今までほとんど利用していなかった。そこで鼓膜とアブミ骨の間を連結するために、鼓膜から外れることがより少ない新しい形状の棘付きセラミック人工耳小骨を開発し、2013 年 3 月に上市した。今回はそれの臨床応用を開始し、著明な聴力改善を認めた 1 例を報告した。