2015 年 61 巻 3 号 p. 97-104
腎細胞癌の鼻腔内(鼻中隔)転移のまれな症例を経験した。症例は 56 歳、女性で、止血困難な左鼻出血を主訴に当院を紹介受診した。左鼻腔内に充満する易出血性の比較的柔らかい腫瘍を認め、既往歴、画像検査および病理組織診断検査の結果、腎細胞癌の鼻中隔転移と診断した。腫瘍は非常に易出血性であったが、鼻腔内に限局しており、蝶口蓋動脈の塞栓術後に経鼻的内視鏡下腫瘍切除術(以下、内視鏡下腫瘍切除術)を施行した。術後合併症なく、経過も良好で、再発は認めていない。腎細胞癌の鼻腔内への転移はまれであり、易出血性である。転移性腎細胞癌に対して、局所制御のための内視鏡下腫瘍切除術は有効であると思われた。