抄録
口腔・中咽頭癌に対する手術後は、口腔・中咽頭を形成する組織の欠損の問題、その欠損を補填する再建組織により嚥下障害が引き起こされる。また、気管切開により喉頭へ呼気が通らないことで引き起こされる喉頭の知覚低下が、誤嚥の一因であることは古くから示唆されている。当科で口腔・中咽頭癌に対して、2010 年から 2013 年の間に手術を行い、術後初回に嚥下造影検査を行った 32 名(舌癌 18 名、中咽頭癌 14 名〔側壁 9 名、上壁 3 名、前壁 1 名、後壁 1 名〕)を対象とした。誤嚥量と咳反射、咽頭クリアランス、検査時のカニューレの有無、再建材料の比較を行った。その結果、検査時にカニューレがあり、咳反射が不良なほど、咽頭クリアランスが不良なほど、誤嚥量が増大した。また、舌癌術後のうち、残存舌根量が少ないほど、口腔保持が不良となり、誤嚥量も増えることを確認した。再建材料として、前外側大腿筋皮弁と腹直筋皮弁の差は認められなかった。以上より、組織欠損と再建組織以外に、喉頭感覚が嚥下にとって大切なことを再確認できた。