2016 年 62 巻 1 号 p. 33-39
錐体部真珠腫はその解剖学的特徴から診断が遅れがちであり注意を要する。本症例の錐体部真珠腫は幼少時に手術既往があり、既に聾であった。その後、同側の顔面神経麻痺を発症したにもかかわらず精査されなかったため診断が遅れ、10 年以上を経て髄膜炎発症を契機に診断に至った。真珠腫の占拠部位は supralabyrinthine type であったが、既に内耳機能の廃絶が推察された。耳性頭蓋内合併症例であったため、まずドレナージ手術を行い、感染の十分なコントロールを試みた。その後 2 期的に、内耳を温存しないことで比較的広い術野を得られる transotic approach を用いて真珠腫を全摘出した。