2017 年 63 巻 3 号 p. 88-92
右上顎の複雑性歯牙腫が増大し、右上顎洞炎を合併した 1 例を経験したので報告する。 症例は 61 歳、女性。右頬部痛と膿性鼻漏を主訴として受診した。CT にて右上顎洞後下方に石灰化を伴う巨大な骨性の腫瘍と周囲に軟部組織陰影を認めたため、上顎洞腫瘍摘出術を施行することとなった。右犬歯窩から Caldwell-Luc 手術に準じて上顎洞にアプローチし、内視鏡補助下に歯科用のドリルを用いて骨性の腫瘍を分割して摘出し、鼻内からも内視鏡下に右上顎洞と前篩骨洞を開放した。病理組織診断から、骨性の腫瘍は複雑性歯牙腫であることが明らかとなった。複雑性歯牙腫は下顎や上顎前歯部に発生するとされているが、本症例は、上顎洞に発生し緩徐に増大することによって上顎洞炎を合併したまれな症例であると考えられた。