抄録
急激な頸部腫脹を来す疾患は腫瘍性病変や感染がまず鑑別に挙げられるが、深頸部血腫も鑑別の一つであり、副甲状腺からの出血は比較的まれながら報告が散見される。今回われわれは症状、臨床所見から深頸部膿瘍を疑った副甲状腺腺腫からの特発性出血症例を経験した。症例は 43 歳の女性。頸部痛、頸部腫脹で発症し、経時的に増悪、当院受診時の第 11 病日には発熱、呼吸苦を伴っていた。血液検査で炎症反応上昇あり、経過、画像所見からも頸部膿瘍を否定できず、緊急手術を行った。甲状腺左葉外背側に明瞭な被膜を持つ腫瘤性病変を認め、内部には茶褐色の貯留液が充満していた。組織診断より副甲状腺腺腫の腫瘍内出血と診断した。経過良好にて術後 10 日目に退院となった。頸部腫脹の際には、副甲状腺組織からの出血も鑑別に挙げるべき重要な病態である。