2017 年 63 巻 5 号 p. 183-188
気管は生命維持に不可欠な臓器であるが、時として悪性腫瘍、もしくは、外傷、炎症などによる狭窄性疾患のため切除を余儀なくされる。切除により生じる気管欠損は整容的にも、機能的にもハンディキャップとなるため、早期の閉鎖が望ましいが、大きな欠損の再建には難渋することも多い。気管の安全かつ簡便な再建方法の確立を目指して、われわれはかねてより in situ tissue engineering のコンセプトに基づき人工気管の開発に取り組んできた。コラーゲンの足場をポリプロピレンで補強した生体内組織再生誘導型人工気管は、非臨床試験で長期的な安全性、有効性が確認されており、さらに、施設内倫理委員会の承認のもと行った臨床研究でも良好な治療成績が確認されている。現在われわれは、この人工気管の医療機器としての薬機承認および保険収載を最終的な目標とし、有効性、安全性を確認するための多施設共同医師主導治験を行っている。対象は既存治療で気管切開孔を閉鎖できない患者と悪性腫瘍切除に伴い気管軟骨の 1/2 周以上かつ 3 輪以上の欠損が生じることが予想される患者である。