2017 年 63 巻 5 号 p. 178-182
Ejnell による声帯外方牽引術は、低侵襲かつ比較的簡便な声門開大術として広く普及している。合併症の一つに牽引糸の断裂や緩みがあるが、術後 10 年以上経過して発生した症例の報告はない。今回、術後 11 年目に牽引糸が断裂した症例を経験したので報告する。症例は 72 歳(再手術時)、女性。甲状腺全摘後の両側声帯麻痺に対して、左側声帯を 3 − 0 のナイロン糸で外方に牽引し、甲状軟骨上で結紮・固定した。術後、声門腔は拡大し、気管孔を閉鎖した。術後 10 年目に終診となったが、翌年、労作時の呼吸苦と喘鳴が出現し来院した。左声帯はほぼ正中位に戻っており、牽引糸の断裂または緩みと判断し、再手術を行う方針とした。術前検査中、のどの違和感と咳の出現とともに、牽引糸の断端が声門腔に突出したため、ファイバー鉗子で摘出した。その後、気管切開の後、左粘膜下披裂軟骨部分切除術を施行し、声門後部の開大が得られたため、気管孔を閉鎖した。Ejnell 法による声門開大術では、長期間経過してからでも牽引糸の断裂が生じる場合があることを患者に説明した上で経過観察していく必要がある。