2017 年 63 巻 Suppl.1 号 p. S60-S65
本邦での嗅神経芽細胞腫に対する内視鏡下経鼻手術応用の現況を調べるために、原則的に内視鏡下経鼻アプローチによる Multi-layer resection にて手術操作を行う国内 10 施設による後ろ向き研究を行った。32 例で内視鏡下経鼻単独手術あるいは経頭蓋併用手術が行われており、30 例が新鮮例、2 例が再発例であった。Dulguerov の病期分類で T1:6 例、T2:10 例、T3:8 例、T4:8 例であった。内視鏡下経鼻単独手術例は 24 例、経頭蓋併用が 8 例であった。32 例中 31 例で病理組織学的な断端陰性であった。重篤な術後合併症は認められなかった。嗅覚温存手術を行った 14 例中 13 例で嗅覚温存が可能であった。平均観察期間 40.3 カ月で、1 例で局所再発、1 例で遠隔転移が認められたが、観察期間中の死亡例はなかった。以上から、嗅神経芽細胞腫の手術治療において、内視鏡下経鼻手術は有用なアプローチと考えられ、本アプローチの鼻腔および篩骨洞悪性腫瘍への適切な応用が次の課題と考えられる。