2017 年 63 巻 Suppl.1 号 p. S71-S78
頭頸部癌の切除、遊離再建手術は、手術時間が長く、術野が複数個所に及ぶことから、比較的侵襲の大きな手術と考えられる。しかし、その周術期管理領域は未開拓で、施設ごとの伝統的な管理方法に頼るのが現状である。われわれは 2016 年 9 月から独自の頭頸部癌 ERAS プロトコルにより頭頸部癌切除、遊離再建手術後の周術期管理を行っている。 ERAS 群 11 例は、直近の対照群 60 例と比較し、水分バランスの改善により術後の体重増加が抑えられた。循環動態が安定化し、血圧が低下する症例が少なかった。CRP の値は ERAS 群で有意に抑えられた。術後嘔吐は ERAS 群では 0 例で、対照群で 7 例であった。 皮弁壊死や縫合不全などの主要な合併症は ERAS 群で 0 例、対照群で 4 例であった。以上より、われわれの ERAS プロトコルは頭頸部癌の切除、遊離再建手術に伴う手術侵襲を低減している可能性が示唆された。