2018 年 64 巻 5 号 p. 170-174
甲状腺硝子化索状腫瘍は、1987 年に Carney らによって報告されたまれな甲状腺腫瘍である。本疾患に特徴的な臨床所見はなく、穿刺吸引細胞診で悪性が疑われ術中迅速病理診断で診断が確定することが多い。今回われわれは、術前に穿刺吸引細胞診で良悪性の鑑別がつかず術中迅速病理診断で硝子化索状腫瘍と診断された症例を経験したので報告する。 症例は 26 歳、男性。健診での胸部 X 線写真で気管圧排像を認めたため当科を紹介受診した。視診上、右前頸部に膨隆を認め、頸部超音波検査で甲状腺右葉に50mm 大の腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診では、class Ⅲで悪性も否定できない所見であった。甲状腺右葉切除を行い、標本を術中迅速病理診断に提出し、悪性であれば傍気管郭清を施行する方針で手術を行った。術中迅速病理診断では、腫瘍細胞は円柱上皮で密な索状配列をなしており、細胞には紡錘形の核を認め、硝子化索状腫瘍の診断であった。傍気管郭清は行わず手術を終了した。最終病理診断でも硝子化索状腫瘍の診断であった。本邦からの過去の報告例では硝子化索状腫瘍に対する治療方針は統一されていない。再発に関する報告は乏しく今回われわれが行った良性に準じた対応は妥当と考えるが現況では主治医の判断によるところが大きい。良性に準じて対応するのであれば、術中迅速病理診断を行うことで傍気管郭清を省略するという選択が可能になり術中迅速の必要性は高い。