耳鼻と臨床
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症例報告
音響外傷を機に発症した低音障害型感音難聴
加藤 志保姫野 哲宏坂田 俊文
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2019 年 65 巻 1 号 p. 18-24

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抄録

自衛隊病院に勤務する耳鼻咽喉科医にとって、射撃による音響曝露で感音難聴を来した自衛官を診る機会は大変多く、そのほとんどは高音部を中心とする聴力低下がみられる音響性難聴である。一方、低音障害型感音難聴を来す例もあり、聴力は変動し、めまいやふらつきなどを合併することがある。グリセロールテストに反応することから、内リンパ水腫の存在が推測される。本論文で紹介した症例は 3 例とも自衛官の男性で、射撃などの音響曝露後に低音障害型感音難聴を来した。2 例はグリセロールテストが陽性で、残りの 1 例はイソソルビドにて症状が改善した。音響障害に続発する内リンパ水腫の報告は少なく、欧文で退役軍人の報告と、動物実験の報告があるのみである。射撃が原因と推察される内リンパ水腫については、十分に認識されていないのが現状と考えられる。また、射撃による音響性難聴の予防が十分でないという社会的背景も存在する。自衛官の音響性難聴を予防することも大切である。

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