耳鼻と臨床
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原著
前庭障害が頸部前屈に対する動脈圧応答に及ぼす影響
松尾 聡中村 陽祐松尾 紀子竹内 裕美
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2021 年 67 巻 2 号 p. 57-62

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抄録

頭部低位に体位変換(Head-down tilt:HDT)すると、交感神経活動が抑制され一過性に血圧が低下する。この血圧応答は、HDT による体液の頭方移動で圧受容器が賦活された結果生じたと考えられるが、前庭器が関与する可能性がある。そこで頸部前屈により頭位変換し、同様の応答が起こるか麻酔ウサギを用いて調べた。腹臥位、水平位を保ち、45° 頸部を前屈し、頭部を下方に 5 秒かけて頭位変換した。そして 1 分間その姿勢を維持し、動脈圧と腎交感神経の活動を記録した。この頸部前屈刺激によって、交感神経活動が抑制され一過性に動脈圧が低下した。動脈圧低下応答は自律神経節遮断薬であるヘキサメソニウムの投与で消失し、両側前庭障害群で著明に減弱した。これらの結果は、HDT や頸部前屈によって左右を軸に頭部を下方に頭位変換する前庭刺激が、交感神経抑制を介し動脈圧を低下させることを示唆している。

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