2021 年 67 巻 3 号 p. 129-135
少なくとも一側が高度難聴の症例における人工内耳の効果や両耳聴活用状況を明らかにするために、2009 年から 2019 年に当院で行われた言語獲得後失聴の成人人工内耳例について検討した。対象を術前の聴力レベルにより、両側高度難聴(70 − 90 dB)群( A 群)、術側高度難聴群( B 群)、対側高度難聴群( C 群)、両側重度難聴(90 dB 以上)群( D 群)に群分けした。人工内耳成績は各群で差がなく、高度難聴者においても重度難聴者と同等の言語聴取能の改善が得られていた。対側が70 − 90 dB である A 群と C 群は術後も 1 例を除き、気導補聴器を併用していた。A 群には両側性の急性高度難聴者や補聴器装用が困難な高齢者が多く、B 群には重度難聴側(対側)の聴力が固定してからの期間が長い例で、かつ高度難聴側(術側)の補聴器活用が困難な例が多かった。左右の聴力に差がある場合、聴力が固定してからの期間や年齢を考慮し、良聴耳を術側に選択することで聴取能の改善が得られる症例が存在する一方で、補聴器による対側耳の聴覚補償が困難となる欠点もある。今後両側人工内耳による両耳聴達成を視野にいれた聴覚管理が望まれる。