2023 年 69 巻 2 号 p. 104-109
側頭骨骨折が外リンパ瘻(PLF)を生じることは一般的に知られているが、その診断は困難である。そのため側頭骨骨折による PLF は見逃されている可能性がある。両側側頭骨折により両側 PLF を発症した 1 例を報告する。症例は 18 歳、女性。交通外傷による急性硬膜下血腫の集中治療後に、両側顔面神経麻痺を認め、脳神経外科医より精査を依頼された。歩行可能で、めまいを訴えなかったため前庭障害は疑われていなかった。両側顔面神経麻痺、両側難聴に加え、暗視下の起立も困難であり、赤外線眼振計で自発眼振と頭位眼振を認めた。PLF を疑い、両側試験的鼓室開放術を施行した。両側内耳窓からのリンパ液の漏出を認め、両側内耳窓閉鎖術を行ったところ、翌日には暗視下での歩行可能となった。めまいの訴えがなくても側頭骨骨折症例では PLF を疑い、耳鼻咽喉科で精査を行う必要があると思われた。