1990 年 36 巻 5Supplement4 号 p. 878-881
甲状腺悪性腫瘍725例中の濾胞癌61例に対して, 組織学的再検討を加えた. 濾胞癌の診断基準を厳密に, 乳頭癌の因子が全くなく, 血管内侵襲あるいは, 被膜貫通のいずれかを認めるものとすると, 24例のみが濾胞癌に合致した. これは甲状腺悪性腫瘍の3.3% に相当した. この濾胞癌24例中, 頸部への転移は3例に認めた. これらは数も少なく, 大きさも小で, 正中部に留まつていた. 遠隔転移に関しては, 2例に骨転移を認めた. また, 先に濾胞癌とされていた中に, 乳頭癌のfollicular variantを9例認めた. これは乳頭癌中の1.4%に相当し, その内の6例に頸部リンパ節転移を認めた. 併せて, 濾胞癌診断における組織診断基準統一の重要性を強調した.