抄録
鼻過敏症の実験的モデル動物であるトルエンジイソシアネート (TDI) 感作モルモットの鼻粘膜に, 局所投与の目的に新たに開発された合成糖質コルチコイドであるプロピオン酸フルチカゾンを投与し, 鼻粘膜局所に含有されるヒスタミン量の変化を経時的に検討した. TDI感作によりヒスタミン含有量は約4倍に増加したが, フルチカゾン前投与によりこの増加は約1/2に抑制された. またこのフルチカゾンの効果は, 用量依存的で, 同量のベタメサゾンと同程度であつた. さらに, ヒスタミン量はTDI投与後30分で急速に減少し, 24時間以内に徐々に回復した. フルチカゾンはこのヒスタミン量の減少に対しても抑制効果を示した. この結果より, フルチカゾンの鼻過敏症への作用機序には, 鼻粘膜局所におけるヒスタミン含有細胞の集積の抑制あるいは個々の細胞のヒスタミン含有量の低下と肥満細胞からの遊離の抑制といつた複数の機序が関与していることが示唆された.